業務用エアコンの暖房運転の現実と向き合う
2004年当社より納入の天井カセット型空調機の例です。 温度管理は低い位置での管理が望ましいと判断、室温サーミスタをリモコン側に設定しておりました。
(通常は室内機吸い込み口側になっています。現地でリモコン側にも切り替え可能)
温度を28℃に設定していても寒い..この連絡を受け点検に伺いました。 部屋に入った限りでは何の問題もなく暖まっているのです。 ..社長がおっしゃるには、今は寒くないが、「寒い時がよくある」..。
くわしい調査の結果、空調機に異常はありません。 ただ就業時間帯にある程度の頻度で一時的に温度が下がる傾向がありました。
空調機は設定温度に到達すると暖房機能を停止し、風だけの微風運転になります。 暖房再運転まで約5分~7分程度このままです。 今まで床方向へ吹き出していた温風が送風となり、自動的に風向調整をして天井面と並行に風を吹き出すようになります。 これは人に冷たい風が当たらないようにするためです。
上下の空気循環がなくなる・暖かい空気は軽い・この事で高い所と低い所の温度差はより顕著になります。
(換気扇が回っている場合、急激に足元の温度が下がります)
リモコンサーミスタで室温を管理する場合、サーミスタが室温25℃前後を感じたあたりで自動的に室内機側のサーモへ管理を移行するようにできています。(温度管理の場所が床から1.3mの位置から天井面の高さへと突然変わります) この自動移行の意味は以下の事情からです。
リモコンの取付位置、床より1.3mで28℃にならないとサーモ停止しない..こうなると通常天井付近は30℃を超す温度になっています。(エアコン暖房では床より1.3mの高さで室温28℃は簡単には達成できません)
空調機は吸い込み温度が30℃近くになって長い間運転をつづけると、ガス圧縮機能に相当負担をかける可能性があります。故障の危険性も出て来ます。
..ということで「空調機保護の意味」でリモコンサーミスタが25℃前後(条件により変化)を検知すると自動的に室内機吸い込み口側のサーミスタへ室温管理を移行するようにプログラムされているのです。
この自動移行により実際の空調機はまもなくサーモが働いて暖房運転は停止します。(床より1.3mで25℃付近なら天井面では28℃近くなっています。..まあなんとトンチンカンな話でありましょうか..)
2004年この当時、当社は部屋の温度を均一化するという発想はありませんでした。空調機は絶対的な物と思っていました。現地取付工事施工に問題はありませんので、メーカーであるダイキンを呼んで検討した結果、『強制リモコン制御』にするという結論となりました。
強制リモコン制御とは、一般公表されていない制御です。ダイキンはこのようなお客様からのクレームに備え、リモコン制御から室内サーミスタ制御への自動移行をストップさせる設定をあらかじめ準備していたのです。他メーカーなら..機械は正常に動作しています..で終わりです。
但し、この設定変更をダイキンが一般公表しないのには理由がありました。上記でで書いた圧縮機の保護を優先しているのです。あくまでもメーカーの技術者が直接安全性を確認しないと許可しないというものです。当時はこれで決着しました。今でも正常に動作をしていますが、今の当社なら温度均一化に動きます。
現在の空調機はインバータ方式で、無駄な電力消費を抑えるようにできています。快適性を重視するならば設定温度に達する段階で熱損失を補うだけのデリケートなコントロール技術も国内メーカーは持っているのですが..。(この技術を使えば室温の変化は少なくなります)
しかし今は政府のエネルギー政策(経済産業省の命令)もあり、又、各メーカー国内事情に沿った消費電力の競争もあります。暖房運転を停止されせることで電力消費を抑えています。
空調機の動作は快適性よりも、省エネを優先するようにプログラミングされているのです。
暖房の温度対策は、サーモの位置をリモコン制御に切り替えても問題は解決しません。ムダな電力を使って天井付近を一生懸命暖めるのではなく、部屋全体の温度均一化対策をすれば快適な冬シーズンとなります。
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